シグナル&ノイズ: 天才データアナリストの「予測学」

シグナル&ノイズ: 天才データアナリストの「予測学」 2013/2/2 ネイト・シルバー著

 

マネーボール」で有名になった野球のデータ分析モデル「PECOTA」の開発者であり、2008年の米大統領選の結果を50州中49州的中させたことで一気に脚光を浴びる。

 

第1章では、金融システムが崩壊するほどの壊滅的な危機であるリーマンショックを予測できなかった原因を分析している。

・住宅所有者の住宅価格に対する強気の姿勢は、過去に住宅価格が大幅に下落したことがないという事実からうまれたのかもしれない。しかし、アメリカはバブルがはじける前に見られるような広範囲にわたる住宅価格の上昇を経験したこともなかった。

 

・金融機関が、ムーディーズS&Pモーゲージ証券を評価する能力を信頼したのは、格付け会社がそれまでほかの金融資産を適切に評価していたからかもしれない。しかし、CDSのような新しくて複雑な証券を評価した経験は、格付け会社にもなかった。

 

・経済学者が、住宅バブルが金う湯システムに及ぼす影響を過小評価したのは、過去に住宅価格が上下しても金融ステムにはそれほど影響がなかったからかもしれない。しかし、金融システムがあれほどのレバレッジを経験したことはおそらくなかったし、住宅についてあれほどの付随的な賭けが行われたこともなかった。

 

・政策担当者が、金融危機で落ち込んだ経済がすぐ回復すると考えたのは、景気が後退してもV字回復してきたという過去の経験があるかもしれない。しかし、それらの景気後退は、金融危機から生じたものではなかった。金融危機は特別なものである。

 

失敗の原因を一言でまとめるなら、「アウトオブサンプル」であったといえる。

予測のばらつきが少ないことは、的中率が高いことと同義ではない。

 

第11章 打ち負かすことができないなら -金融市場と予測可能性

 因果関係のない相関関係をシグナルとしてとらえれてしまうと、市場に打ち負かされる。

金融市場における理性的でないとレーダーをノイズとレーダーと呼ぶ。ノイズとレーダーのいない市場では、誰もが本物のシグナルに基づいて賭けをする。価格はいつも合理的で、市場は効率的である。しかし市場が効率的と考えるならば、取引を行うこと自体合理的でなく、結果的に市場は存在しなくなる。効率的市場仮説は自滅的なパラドックスを抱えている。

 

人はランダムなものから規則性を見出そうとする。ランダムウォークのチャートと、実際の金融市場のチャートを見分けることはできない。ランダムウォークのチャートに見えるトレンドは確率的トレンドであり期待値は0である。

 

第13章 見えない敵 -テロリズム統計学

 911テロや真珠湾攻撃は予測ができたのか、事象が起きてから見れば明確なシグナルは確かに存在するが、事前にノイズとシグナルを見分けることは困難である。

 

世界は確率的に不透明であり、予測をすることは非常に難しい。

予測の基に使うサンプルは適切なものか、ノイズをシグナルと捉えオーバーフィッティングしていないか、バイアスがかかっていないか、予測においては、過去の過ちを繰り返さないことが重要である。